コラム「“ノルウェーの若き暴れん坊”ヘンリック・クリストファーセンに注目!」text 畠山喜代子

コラム「“ノルウェーの若き暴れん坊”ヘンリック・クリストファーセンに注目!」text 畠山喜代子

■昨季、強烈なインパクトを受けた男

ヨーロッパでアルペンスキーは誰でも気軽に楽しむことが出来る冬のスポーツであり、山間部では小学校から体育の科目にもなっているなじみの競技。シーズン中には各地で約4000ものレースが行われ、種目のいかんに関わらずテレビの視聴率ではトップを占める人気スポーツだ。

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日本選手もワールドカップに出場しているスラローム(回転)は、アルペンスキーの基本ともいえる種目。大会ではトップ選手を見るという楽しみだけではなく、これから他の種目にも羽ばたいていく若手選手を発見するという意味でも見逃せないものだ。
そんな中で昨シーズンのスラローム第4戦・アーデルボーデン大会で間近に見たヘンリック・クリストファーセン(ノルウェー・当時19歳)には、強烈な印象を受けた。

アーデルボーデンのコースはゴール前の急斜面が長く、ここまで好ラップタイムできたベテラン選手も、急斜面入り口からのコースセットのわなにかかって失敗する者が続出するほど。多くの選手はスピードの調整がままならず、ターンでたたき落とされて次の旗門へ上り直してタイムロスをすることになってしまう。その瞬間には観衆の悲鳴や嘆きが響き、見ているものも目を離せず、緊張させられっ放しなのだ。

この日、2本目を24番目にスタートしたクリストファーセンは、その斜面変化にも難なく対応した。旗門に向かう体重は正確にスキーにのってタイムを稼ぎ、急斜面入り口でもためらうことなく旗門へ突っ込んでさらに速度をあげ、大観衆の喝采を浴びた。

この時点でリーダーに立った彼は、終わってみれば1位マルセル・ヒルシャー(AUT)、2位アンドレ・ミーレル(SWE)につづく3位でシーズン2回目の表彰台へ上がった。
その後のクリストフエルセンは、ワールドカップ2シーズン目のスラローム出場ながら、 第7戦シュラードミングで初勝利を上げて、キッツビュエールでは2位。3位にも3回なり、ワールドカップ全9戦ですべてポイントを獲得し、種目別スラローム総合では1位のヒルシャー(AUT)と2位フェリックス・ノイロイター(GER)に続く3位。 ソチ五輪にも出場して銅メダルを獲得した。

■スーパー大回転、滑降でもトップ選手になりたい。

この小柄でまだ体も細目のクリストファーセンは、幼少時から“野生児”と呼ばれるほど自然の中ではエネルギーあふれる暴れん坊だった。 オスロから15kmの森の町ローレンスゴクで父親からスキー手ほどきを受けて熱中した。
ただ、スキーというスポーツはお金がかかるものだ。ノールウェースキー連盟に加入されたジュニアであればスキー、他のマテリアルもスポンサーからの提供を受けられ、年間のスキーリフト券もあたえられるが、始めた当初はすべて両親の負担だった。父は小さい食料品店を経営していて、昼間は母親が店に立ち、父は深夜まで営業してヘンリックと彼の弟のスキー教育費をまかなった。そうした両親にヘンリックは非常に感謝をしている。その当時も現在も、テクニックの多くはイビッア・コステリッチ(CRO)から学んだという。

ヨーロッパカップを経てワールドカップへ出場するころになって、父はノルウェーのヨーロッパカップ女チームコーチに就任した。「いまではレースの前後、1,2本目の間でも父と電話で話し合います。 テレビでいつも見てくれている父は、僕以上に僕の事を知っていていいアドバイスをしてくれます。将来的にはスーパー大回転や滑降でもトップ選手になりたい。ただ、ヨーロッパカップでスーパー大回転に出場したことはありますが、まだスピード系は経験を積む必要があると思います。当面は体力をつけることを目標にし、体重も80kgにはしたい。ワールドカップでの高速系種目への挑戦には、あと4~5年はかかるかもしれません」
柔和で眠そうな目をしたヘンリック・クリストファーセンだが、インスペクションやレースになると、その目はゴーグルの下でどのように変貌するのか? そして大先輩たちを、どう脅かすのだろうか。

■今季、スラローム第1戦で、いきなり優勝

アルペン大国といわれるなかのノルウェーの昨シーズンの国別ランキングは8位で、男子は7位。1967年から始まったワールドカップのネイションズカップは、1990年以来25年間連続して王国オーストリアが手にしている。この地位はゆるぎなく今後も続いてゆくと確信できる。それはスキーが国民にとって第一のスポーツであり、広い底辺をもつ三角形の地域組織が充実しており、スキーマテリアル製造も国内で充実した産業であるからだ。

今季ワールドカップ・スラローム第1戦は、フィンランドのレヴィで開催された。その慣れ親しんだ北欧のライトに照れされたピステで彼は、2位のヒルシャー(AUT)と3位のノイロイター(GER)を従え、表彰台の真ん中に立った。1月6日のザグレブ大会終了時点でクリストファーセンのワールドカップランキングはスラロームが5位で、大回転が19位。スキー大国に挑んでいく、ノルウェーの若き才能から、今季は目を離せない。

畠山喜代子/はたけやまきよこ
東京出身、1971年よりスイスで公務員の仕事につく傍ら、取材活動を始めたのは1987年、スキーアルピン、ノルディックを主体に自転車競技、山岳マラソン等、を各スキー誌、新聞(内外)に発表。あるワールドカップスキーアルピンのイタリアでのレースのあと、アルベルト.トンバのファンは言った「トンバは勝った、こんな困難な仕事を果たしたんだ。凄い、そう思う。さあ、明日は自分も仕事(自動車整備工)に精を出さなきゃ」 スポーツの感激を誰にでも浸透させたい、常々そう思っています。

Source: 日本スポーツプレス協会
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